何気ない一言が、信頼を大きく損なう
誰からも好感を持たれやすい性格のひとつに「裏表のない人」というものがあります。相手によって態度を変えない、いつも正直で人を欺いたりしない。こうした態度は、一般的には「人として好ましい性質」とされています。
しかし、「いつでも誰にでも全袰表なく本音をベラベラとしゃべる」というのも、それはそれで困りものです。これについてマキャベリは、『陰謀については、火急の必要性が生じた場合か実行の瞬間以外は、決して他人に明かしてはならない』と述べています。
「陰謀」というと大げさなことのように聞こえますが、これは別の言い方をすれば、『本心を軽々しく他人に話すな』というふうに解釈できます。たとえば、あなたが上司に不満を持っていて、飲み屋で同僚にうっかりその不満を漏らしたとしましょう。
自分としては、ちょっとした愚痴のつもりだったかもしれませんが、同僚がそれをどうとらえるかはわかりません。もしかすると、その同僚は『あなたが不満を漏らしていた」ということを、こっそり上司に報告するかもしれないわけです。
そんなことはないだろうと思うかもしれませんが、人の口に戸は立てられませんから、絶対に大丈夫とは言えません。さらに厄介なのは、人づてに伝えられることで、話に尾ひれがついて、とんでもない誤解を招いてしまう可能性があるということです。
心の広い上司なら「飲みの席での話だし、大目にみよう」と寛容に受け止めてくれるもしれませんが、それでも『自分のいないところで文句を言っていた」と聞かされれば、誰だっていい気はしないものです。
人同士が関わる以上、ビジネスではお互いの『信頼関係』がとても大切となってきます。どれだけ有能でも、相手に不信感をもたれたら仕事はうまくいきません。こうしたリスクがある以上、軽はずみに本心を話すのは、くれぐれも慎む必要があるわけです。
本音と建て前を使い分ける
とはいえ、なにも「誰にも本心を明かすな」と伝えたいのではありません。それはそれで、「あいつはなにを考えているかわからない」となり、かえって相手の信頼を得にくくなります。重要なのは、状況に応じて『うまく本音と建て前を使い分ける』ことです。
たとえば、セールスマンでも、自社の製品のよいところばかりをアピールする人はあまり信頼されません。それよりは、自社の劣っている部分をきちんと説明しつつも、それをカバーするようなメリットがある、というふうに説明する人のほうが、よほど「信頼できる」と感じるのではないでしょうか?
相手の性格や出方を見ながら、上手に「本音と建て前」を使い分ける。ビジネスでは、こうしたバランス感覚を持つことが非常に大切な要素となるのです。