人は「必要」に応じて動く
仕事で部下に指示を出したり、取引先の方に何かを依頼したのに、その相手がなかなか動いてくれない場合があります。どうしたのだろうと思って確認してみると、相手は指示や依頼の内容は把握しており、作業の進め方がわからないというわけでもないらしい。
こういうケースは、あなたの身の回りにもあることでしょう。彼らは、なぜ動いてくれないのでしょうか。その理由を探るなら、人がどのような条件で動くのかを知るのが近道です。
たとえば、子どものころに学校から出されていた夏休みの宿題。計画的に進めていたり、夏休みの最初の数日で片づけていたという方もいるとは思います。ですが、大半の方は二学期の始業式を迎える数日前になってから、あわてて終わらせていたのではないでしょうか。
宿題を提出するのは、新学期が始まってからです。夏休みが始まったばかりのころは、ひと月ほど余裕があります。すぐに宿題を終わらせる必要がないので、多くの人が「後でやればいいや」と思い、宿題を放っておくのです。
そして、夏休みが残り少なくなると、新学期間近になって提出の必要が迫ってくるので、あわてて宿題をはじめるというわけです。一方、宿題を計画的に進めていたり、夏休みに入った最初の数日で終わらせていた人たちの場合はどうでしょうか。
こうした人たちが宿題に手をつけるのは、「少しずつ進めておけば安心」だったり、『先に終わらせておけば気兼ねなく遊べる』という理由だったりします。彼らにとって、宿題を進めたり終わらせておくことは、安心したり気兼ねなく遊ぶために『必要』なことなので、宿題に取り組むのです。
人を動かしたいときは必要性を明確に示す
マキャベリは『人間は必要に迫られなければよいことを行わず、選択の余地があり、放縦たることができる場合、人間はすべての事柄を直ちに混乱と無秩序に陥れる』と述べています。
これは、「人は必要性がない限り動かない」ということで、逆にいえば「人は必要性があれば動く」ことになります。つまり、他人を動かしたい場合は、必要性を示せばよいのです。これは、ビジネスの場でも同様です。
冒頭で触れたような、部下や取引先が動いてくれないケースでは、相手が作業の目標を明確に認識できていないため、相手が行動を起こす気になれず、先延ばしになってしまっているという可能性があります。
人は基本的に怠け者なので、理由がないと率先しては動きません。指示や依頼を出す際には、その必要性をきちんと相手に説明し、理解させておく必要があるのです。
必要性を説明しておけば、相手も動かなければならない理由や求められている理由が理解できるので、それが行動を起こす力になります。人を動かしたいときは、必要性を明確にするのが鍵なのです。