ベストな方法は時代と共に変化する
ビジネスで陥りやすい罠のひとつに『自己流にこだわりすぎて失敗する』ということがあります。人にはそれぞれ自分なりの仕事のやり方というものがあります。新人のころは、とくに自己流と呼べるようなものはなくても、何年か勤めるうちに、だんだんと「自分なりの仕事のやり方」が確立されていくものです。
それ自体は「自分がもっとも成果を出せる方法」をつくり上げていくことでもありますが、あまりにもそれに固執するのは問題です。たとえば、あなたが自己流の方法で仕事を進めているとします。しかし、その方法が常にベストとは限りません。
これまでは通用していても、時代や状況の変化によっては、その方法では成果が上がらなくなることだってあるのです。その一例として、ビール市場の変化について考えてみましよう。最近は「若者のアルコール離れ」という言葉があるように、以前ほどビールが売れなくなってきています。
そうしたなかで、仮にあなたがビールの開発担当者で「もっと美味しいビールを作れば、若者にも売れる」という信念を持っていたとしましよう。確かに、今までは「より美味しいビール」を作れば売り上げが伸びたかもしれません。
では、現実はどうでしょうか?その答えは、実際のビール市場の売り上げを見れば明らかです。ここ数年、ビール市場全体の売り上げは縮小していますが、そのなかでノンアルコールビール市場だけは右肩上がりで急成長を遂げています。
つまり、あなたが「よい製品を作れば必ず売れる」という自己流に固執していたら、ノンアルコールビールという新しい市場から取り残され、売り上げもさらに減少していた可能性が高いわけです。
そもそも、ビジネスの本質は『顧客のニーズを満たして利益を上げる』ことであって、決してあなたの自己満足を満たす場ではありません。成果も上がらないのに自己流にこだわり続けるのは、意味がないどころか、かえって害悪でしかないのです。
過去の成功体験にとらわれない
これについてマキャベリは『運命は変化するものである。人が自己流のやり方にこだわれば、運命と人の行き方が合致する場合は成功するが、しない場合は不幸な目を見る』と述べています。
ここでマキャベリは「運命」と言っていますが、これはそのまま「時代」と置き換えることができるでしょう。「自分はこのやり方で成功してきた」という自負がある人ほど、なかなか自分の考えを変えることができません。
しかし、やみくもに自己流を貫いているだけでは、新しい時代の変化に対応できずに、衰退していくだけです。過去の成功体験に固執せず、時代に合わせて柔軟に対応する。そうした意識がなければ、厳しい競争社会で勝ち抜くことなどできないのです。